藤原薫の作品は、繊細かつ大胆な、一種独特の世界観があります。細かい書き込み、しかしフォルムはシンプル。舞台が日本でありながら、世界のどこでもいい、あるいはどこでもない情景。なんとも脆くて危うく見える登場人物、しかしその内には生の人間のドロドロしたものがある。触れれば切れそうな作品集です。ただ、思考少年ほどのインパクトはないな。
儚さよりも脆さおすすめ度
★★★★★
少女が女へと孵化するさまを耽美かつ寓話的に描いた作品がプロローグとエピローグを飾っていて、
その他二話の全四話からなる「楽園」と称された短編集です。
相変わらずの絵の緻密さ、繊細さです。
頁をめくるという動作をするだけで、強風に煽られた砂糖菓子が吹き飛んでしまうような、そんな感覚の脆さがこの人の絵にはあります。
しかしデッサン力などは素晴らしく、一コマひとコマそれが既に画集に収められている絵のようです。
本の装丁もとても綺麗です。
今回の短編集の内容は、今までの人形的だったものから人間的なものへと変化しているようです。
無機質だったものがややエロティックな質感を帯びており、益々危うさが際立っています。
この変化は藤原薫自身の孵化でもあるのでしょ!!!うか。
先に発売された画集と併せて読んでみると一層世界観が楽しめると思います。