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破戒 (岩波文庫)

島崎 藤村
おすすめ度:★★★★★
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文学作品として楽しみたい
おすすめ度 ★★★★☆

本書は、部落差別問題への認識の甘さ・作者自身の差別意識云々から、作品として低く見られる向きがありますが、そもそも作者自身に差別意識があったかなかったか等といった価値判断(倫理上の問題)と、文学作品が優れているかどうかという問題(文学としての価値)は無関係ではないでしょうか。この小説の中で登場人物(瀬川丑松)が考え、思うこと、すなわち、自己が被差別部落出身でなければいいのになどと考えることは、実際にこの時代でこうした境遇におかれた人(被差別部落出身でありながら、それを隠して生きている人間)であれば、十分ありえる話だと私は思います。
現代の価値基準から離れて、純粋に文学作品として味わえば、十分面白く、読みごたえのある作品だといえるでしょう。ただし、藤村の散文の処女作品ということもあり、小説の構成や内容の深まり、主題への迫り方に若干の甘さが見られますので、星4つにしました。でもそのお陰でとても読みやすい作品にはなっていると思います。



破戒と部落解放運動
おすすめ度 ★★★★☆

島崎藤村の「破戒」は、明治39年に自費出版されました。
全国水平社の結成が大正11年ですから、部落問題を真正面から
見据えた「破戒」の先駆性は明らかです。
 昭和14年に「破戒」の改定本が出版されました。島崎藤村と
全国水平社との協議による改定でした。
 「破戒」の差別的表現を訂正したとのことです。

 確かに初版「破戒」には、種々の差別的表現がありました。
「穢多、非人、かたわ、気狂い」等の。
しかし、それを訂正すると、かえって、部落差別を糾弾する
作品のインパクトが明らかに低下してしまい、改悪でした。
そして、昭和28年、初版本が復原されます。
しかし、部落解放同盟は、
1.何の解説もない、単なる初版本の復元はおかしい

2.部落民と解放運動を考慮していない
 というものでした。
 「破戒」には、確かに「差別的要素」は、あると思います。
・差別用語
・丑松が、穢多だということを隠していたことを、土下座して
 謝る。アメリカへと旅立つ=逃避
・解放運動家の猪子連太郎の台詞:「いくら我々が無智な卑賤
 しいものだからと言って」の問題点

 しかし、まあそれは、何というか、無いものねだりという気がしてなりません。
まだ、部落解放同盟はおろか、全国水平社すら無かった時代のことですからね。
時代的制約というものが、時代的限界性というものが確かにあるでしょうね。
むしろ、その先駆性をこそ賞賛すべきだと思われてなりません。



「現実」にアピールする自然主義文学作品
おすすめ度 ★★★☆☆

文学作品の「読み応え」という面から見るのなら五つ星でも良いのだろう。ただよく言われるように、本作品の最後には致命的な「逃げ」があるように思われる。その部分を残念に思う読者が多いだろうことから評価を二つ下げている。

「現実世界」的な解決法により小説の評価を下げるのもどうかと思われることもある。しかし島崎藤村が『破壊』により目指したものが、いわゆる自然主義文学であるとすれば、現実世界との関係の部分から小説の不出来を論じるのも適切なことであろうと思う。

尚、この島崎藤村「逃げ」については野間宏氏も本書の解説で的確に表現している。

ところで。本書で用いられる「穢多」の表現。初版以外では「部落民」と改められているのだと思う。こんな話を言ってもなんのことだかよくわからない人も多いかと思う。以前筒井康隆氏も言っていた「言葉狩り」は思いの外着実な進化を遂げていて「僕は片輪ですから」と言っても意味の通じないことが多い。

ある意味で「言葉の進化」と捉える人もいるかもしれないが、果たして、その「言葉の進化」は「逃げ」にならずに「解決」に繋がっているんだろうか。

と、このような「現実世界」を考えさせられるのも、「自然主義文学の傑作」と言われる本書が「現実世界」に向けた強烈な主張を行っているからなのだろう。

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