西村寿行先生の著書の中で一番のお気に入りです!おすすめ度
★★★★★
初期の頃の西村先生の意気込みが本当に感じられて、私の一番のお気に入りです。
突然かけられた濡れ衣。そして逃亡。
検事と言う立場から一転、逃亡者へ。荒々しい筆遣いですが
追われる立場に落ちた者の心情が伝わってきます。
羆との戦い、セスナ機での道内脱出。
そして新宿の雑踏の中、迫り来る警察の包囲網をアッと驚く手段で
脱出。このシーン、大好きです。
そして患者を装い、精神病院に潜入してまで証拠を掴もうとする
気迫。
まさに冒険の連続です。
殺人の謎解きの部分がちょっとまどろっこしいですがそれでも
読み応えは充分です。
映画では高倉健さんが主役を演じています!
鞘取り勉強・実践会 竹本淳一
ハード・ロマンの誕生
おすすめ度 ★★★☆☆
1975年発表、西村寿行の記念碑的出世作。
新宿の雑踏で、東京地検のエリート検事・杜丘冬人は突然に見知らぬ女性から強盗強姦犯人だと指差される。もちろん杜丘は潔白の身であるが、彼は逃亡を図った。何者かが彼に罠をかけた。自分自身の手で真犯人を突き止める為、彼の必死の逃亡劇が始まった。さらには殺人者の容疑が掛けられながらも、北海道の山奥へと身を隠すが、警察の追跡網が迫ってくる。
今でこそハード・サスペンス小説の大家として名高い西村寿行であるが、この作品は彼が初めて書き上げた冒険小説で、後に映画化された程のヒット作となった。西村は初めて冒険小説を書こうという気合は相当なもので、中央アルプスの山中にある山寺にひとり篭り書き上げたのだという。断定調の短いセンテンスの文体が特徴の西村寿行作品であるが、この頃はまだ確立しておらずにびっしりと多めの文章は読み応えがあると言うよりもちょっとまどろっこしい。冒険小説であるが殺人トリックにも重きを置いていて、最後の最後にトリックの真相が明かされる。ご都合主義的な展開も多々あり、西村寿行の初期作品としての青臭さが感じられる。