等身大の暮らしを選んだ人たちおすすめ度
★★★★★
有機無農薬栽培を「自然農」と呼んでいる人がいたり、耕さなくても専用の機械で田植えをしていたり(自然耕)、さまざまな栽培方法があるが、奈良県の川口由一さんが提唱している「自然農」には、耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としないという基準がある。
本書は、その川口さんの自然農を学び、全国各地で実践している人たちを訪ねたルポルタージュである。写真集としては小さめながらも、B5変形判の写真は迫力があり、草や虫とともに野菜やお米がのびのび育っている様子がよくわかる。また、自らの田畑に立っている登場人物の表情も明るく、のびのびしていることが感じられ、その人物も田畑と一体化したような印象さえ受ける。
インタビューのページでは、どうして自然農を始めたのかその動機がつづられている。川口さん自身は、家業の農家を継いで農薬や除草剤を使った農業で体を壊し、この道に進んだという。若い人たちは、有機農家で研修をしたものの、耕して、堆肥をすき込んで、手で除草をするという作業になじめず、自然農の豊かな世界にみせられた人も多いようだ。著者の淡々とした文章によって、逆にそれぞれの人生観がくっきりと浮かび上がってくる。
「命の営みにひたすら沿う自然農は、この世界に何ら問題を招かず、永続可能な農のあり方なのです。これからは『何かしないといけない』という考え方はいりません。余計なことをしないことがたいせつです。環境問題にしても、問題を解決するのではなくて、問題を招かない生き方をすることです」(本文より)
川口さんの言葉は、一人ひとりが変わらなければ、社会は変わらないことを教えてくれる。
自然農の田畑の写真から気持の良い波動を感じます!
おすすめ度 ★★★★★
当初、自然農の写真集と聞き、地味だなあ‥売れるのかしら?と思いましたが、見て納得、読んで感動でした!
畑には作り手の性格が出ると言われていますが、その作り手の顔とともに美しい田畑の写真にいのちが輝いていました。
その自然農の田畑の写真から、なんとも気持の良い波動を感じるのは不思議です。
また、自分が知りたいことではなく、相手が話したいことを引き出す聞書人(キキガキスト)と称する著者の新井由己さんの文章が写真を更に引き立てていました。
そして、エピローグでは、桜沢さんのマクロビオティックから、岡田式自然農法、福岡式自然農法、藤井さんの天然農法、川口さんの自然農、パーマカルチャーまで、それぞれの特徴と関連性を分かりやすく解説してあり、私的には頭の中がスッキリしました。
農的暮らしに興味のある方には是非お勧めの1冊です。