津田左右吉の裁判に係る部分の書き方はすばらしい。しかし、その説をかなり認めておいて、その後に著者自身は日向神話を実在のこととして話を進めるのはどこか納得できない。神話による歴史と邪馬台国を結びつける努力をしていない。最后の天皇論は蛇足。
かき立てられる古代へのロマンおすすめ度
★★★☆☆
縄文人の狩猟民族が土着の勢力であり、それを大陸から渡来した農耕民族である弥生人が国土を統一し、それが天皇家のルールにつながる。
これらが主流的な考えではないだろうか。
著者は縄文時代におきた海面の低下による耕作面積の拡大が、農耕文化を即し、いち早くそれらを取り入れたグループが勢力を拡大し、天皇家のルーツとなった説を展開する。
諏訪の御柱や、伊勢の忌み柱など、柱に対する強い意識が既に縄文の頃から存在し、その祭事を天皇家も受け継いでいる事実をつきつけられれば、なるほどと納得してしまう。
どちらにしても、宮内庁が天皇陵の調査を拒否している現状では、これ以上議論が真実を極めることは不可能であろうし、もし公開したとしても、当時の日本に文字が存在していなかった以上、諸説の氾濫に歯止めがかかるわけではないだろう。ドラえもんでも友達にするしか方法はないかもしれない。
しかし解明できない謎に、我々素人も古代の歴史に思いを馳せて、少し現実逃避して読書の時間に浸るのは何もにも変えがたい楽しみである。そういった意味で著者の文章は読みやすいし、そのような目的を求める歴史好きの読者にはピッタリではないだろうか。
ただ少し物足りないのは、今上天皇ご自身も韓国大領との晩餐会の席で言及されているように、天皇家そのものがそのルーツに深く韓国と関係していることを認めている。
そういった部分にも、こういいた題名の本ではふれなければ、片手落ちの感を拭えないだろう。