「・・・一歩前に踏み出すっていいことよ。やりたいことをやるっていうのもね。やりたいことをやるっていうことは、その結果がどうであれ、自分で責任を持つという自覚が無ければだめ。それがルール。だからやりがいがあるってことなのよ。・・・」
中学時代って、こんな感じでしたよね・・おすすめ度
★★★★★
緊張性で、三塁のレギュラーが取れない普通の少年。
先輩部員や、部の監督や、体育の教師や、時には実の父親との間で、様々なトラブルに出くわす。
彼が特に反抗的な訳でもなく、妙なヒロイズムで動いている訳でもない。中学生も生きていれば、時に壁が立ち塞がるという事だ。
安物の学園ドラマのように、発生した問題が、そのつど溜飲の下がるような結末を見るわけではない。
むしろモヤモヤしたまま、日々は流れていく。
このあたりが、リアルであり共感できる。
中学生のぶつかる壁は、殆どの場合、大人の都合に押し切られて、壁のまま終わるのだ。いや、実際のところ我々もそうだったではないか。
そんな普通の中学生が、海外のラジオ番組でふと耳にしたビートルズの曲との出会いから、少しだけ一歩踏み出す物語だ。
たかだか一歩だが、周りの友や、初恋の人にも確実にその一歩は勇気や影響を及ぼしていく。
だからといって革命的な出来事が起こるわけではない。
でも、触れ合った人々には、大事な人生の一コマになっていく・・
だれしも中学生の時代があり、彼と同じような、ひと時があっただろう。
懐かしくもあり、主人公たちが羨ましくもある。
胸がキューっとなる、あの頃の感じを思い出したい人には、是非手に取って欲しい作品だ。
青春小説の傑作おすすめ度
★★★★★
主人公は14歳。今までどちらかというと引っ込み思案だったが、ある日ラジオで聴いたビートルズが少年のすべてを変える。
輝く野球部での青春の日々。嘘つきの大人への反抗。分かり合えないもどかしさを抱えたまま父親と接する日々。クラスのはみだしもの。初恋。少し前を向いて、少し勇気を出すこと。
瑞々しい少年の一夏の素晴らしい青春が、読み終わってもまだ自分の心の中にぴったりとはまり込んでいつまでも消えない余韻とあたたかさを残してくれる。
金城一紀の「GO」や森絵都「永遠の出口」などと並び、青春小説の傑作のひとつだ。
THE川上ワールドおすすめ度
★★★★★
読み終わった後、ほんとに素敵な作品だと思い胸が詰まりました。こんな恋は、誰もがしてみたくなるんではないでしょうか。ぜひ読んでみてください。たくさんの人が僕と同じ気持ちになれたらいいですね。
出来すぎた話ではあるけれど。
おすすめ度 ★★★★★
ハードカバーでこの作品を読んだときには自称Beatlemaiaとしては、なんともいえない衝撃を受けた。
川上健一さんの作品は、どれも、ありそうだけど、あったら、ちょっと出来すぎた話だよなあ、というのが多いのだが、この作品も、その一つである。
様々な場面が、一つ一つはよく分かるのだが、全体としては、そこまでつながるの???
でも、そのことを素直に受け入れられるか、シニカルに否定するかでひょっとしたら、「若さ」とか「青春」の(少なくとも)心持の差であると思う。
この作品を黙って「いい話だ」と感心し、絶賛できる齢50歳を越えた自分を、われ名がウ亜「うい奴じゃ」と思う。