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やみなべの陰謀 (ハヤカワ文庫JA)

田中 哲弥
おすすめ度:★★★★★
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「時間SFの傑作」という説明を見て噴き出した。
おすすめ度 ★★★★★

確かに「時間SF」で「傑作」かも知れないが、この2つを合わせて使うのはどうだろう、というか、本書の著者田中哲弥もこの表現を見て絶対に噴き出したはず。

そこまでカッチリとした、燦然と輝いていそうな表現は決して当てはまらない。冒頭の数行を読んだだけで「ああ、あの商品説明は読者と作者の両方をおちょくってるんだな」と分かるのだが、しかし嘘をついているわけではないし、かといって誇張でもない。あくまで“おちょくっている”のであって、もしかするとその外見と中身の温度差も、本書の最大の特徴である「関西の笑い」にのっとった「フリ」と「ボケ」なのかも知れない。

要するにこの本は、一見すると(タイトルと表紙が既に怪しいのだが)ドラマチックな娯楽映画の原作にもできるくらいのカッコイイ超大作‥‥ではなくて、基本的にめちゃくちゃ笑える喜劇なのである。

田中哲弥はもともと吉本興業で舞台の脚本を執筆したりしていたので、ノリというか手触りは関西的なお笑いの魅力が詰まっている。だから昨今のお笑いブームを受けて復刊されたのかなという気もする。
その魅力の理由の一つは文体。口で話すのではなく文章で笑わせることに関して、田中哲弥の右に出る者はあんまりいないんじゃないかと思う。並々ならぬセンスと知性を必要とするこれらの文章は、ほとんど馬鹿馬鹿しいこと(ナンセンス、ではなく馬鹿)の表現ばかりに費やされているのだが、その筆致がひとたび人間的な魅力の表現に向けられると、これが不思議なくらい胸を打つのである。

本当に可笑しいとは、本当にカッコイイとは何であるか。この「時間SF」の「傑作」には、現代の作家、読者が忘れかけている“本物の”何かがある。
深く考えず、お笑い芸人のコントでも見るつもりで読んで笑って、ついでにホロリとして欲しい。



他の作品も読んでみたい。
おすすめ度 ★★★☆☆

それぞれの話は、そこそこおもしろい。
第一話は『ある日突然〜』というSFには定番のサプライズで物語がはじまる。ある日突然アロハシャツを着た大男に千両箱を届けられるのだ。
第二話は千両箱を届けられた男の子が体験する不思議なボーイ・ミーツ・ガールのお話。
第三話は、千両箱の出自が明らかになる悲恋の時代物。ここでタイムトラベルの原因も説明される。
第四話は、少し未来の変わった世界。大阪府知事の独裁政権により大阪が大阪らしくあるために「大阪
特有の文化を失わせる」と見なされる行為が条例によって禁止されるようになってしまったのだ。その世界で静かに進行するレジスタンス活動が描かれる。
第五話、ここですべての話が円環となってつながる謎の解明がなされる・・・・はずなのだが、このパートで明かされる事実がすべてを網羅しているわけではない。どうも、この部分が弱い。
それが少し不満だ。すべてのピースがピタッ!とはまらないのだ。
でも全体的にどうかといえば、それほど悪くない。吉本の台本作家として活躍していた著者の繰り出すギャグもおもしろい。いかにも吉本的だ。
どうだろう?保留だな。この人は他の作品も読んでみて判断したいと思う。



豪快にてきとー
おすすめ度 ★★★★☆

タイムスリップネタとは言え、つっこむことなど思いもつかせぬ有無を言わせぬスピード感が爽快。最終章でも解決されたのかされてないのかよくわからないけど、別にそんなことは気にするような話ではないので、ただただ楽しむべし。



待望の復刊!
おすすめ度 ★★★★★

7年ぶり、待望の復刊です。
まさに埋もれていた名作、ハヤカワからの刊行ということで、やっと本来の読者層に向けた土俵に立てた作品だと思います。

題名に惑わされず、1度手に取ってみて下さい。笑いも涙も愛も…すべてがこの一冊に詰まっています。

日本SF界待望の傑作だと思います。


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ゼブラヘッド 田中哲弥 安堂友子