芯の通った美意識に支えられた「水もの」曲集 おすすめ度 ★★★★★
ミケランジェリが亡くなってから、なかなかドビュッシーの納得できる演奏に出会えません。
しかし、ここで演奏されているドビュッシーやラヴェルは、演奏者の一本芯の通った美意識と透徹した解釈、それを十二分に具体化するテクニックに支えられ、かなり満足できるものです。スタインウェイではなくベーゼンドルファーを使用しているというのも、大きなポイントです。
また、リストについても、決してテクニックをひけらかすのではない、イメージ喚起力の強い演奏で、好意がもてます。
ところで先日、『のだめカンタービレ』の、恵がフランスの海辺の町で初めてのリサイタルを開く話を読んでいて、あれっと思いました。主催者のリクエストでモーツァルトを2曲演奏した後、恵が選んだのは、リストの『波を渡るパオラの聖フランチェスコ』、ラヴェルの『水の戯れ』と、海辺の町にちなんだ「水もの」2曲、そしてシューベルトのイ短調ソナタでした。「リストとラヴェルはのだめの先生が選んだのかな。それにしても渋い選曲だなあ」と思っていたら、なんとこのアルバムにその「水もの」2曲が入っているではありませんか。ひょっとして『のだめ』の協力者のなかに、このアルバムを聴いた人がいたのかも。ブームに便乗したCDはいくつも出ていますが、せっかくならこういうしっかりした内容のアルバムも、もっと多くの人に聴いてほしいですね。
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