歌好きな私には外せない林明日香おすすめ度
★★★★★
既に高みに到達・完成された、たおやかで朗々とした歌声。しかもよくある、歌声は大人だけど表現はまだ青さがなんてこともなく、驚くほど説得力を備えた各楽曲への掌握力です。うたと一体となるとは当に彼女のような音楽才能に言えることかもしれません。
この惚れ惚れさせる〔深い発声〕とそこに溢れている〔迫真性〕について。
前者はよくある胸に声を落としただけの低音によるものでなく、低音でも高音でも喉の開放や頭声、下半身の支えが素晴らしいから常に体中全てが楽器のように鳴るんですね。だから開放的でもあり同時に内省的な深みも増す歌声となっています。しかもそのスケールが大きくなればなるほど、彼女の宇宙観は翼を広げるように深遠になるのです。
続いてその声へ宿すのは、後者の主題核心を掴んだ表現力。ここには林明日香という歌手のアプローチの直向さが伺えます。単に感情をオーバーに歌うのでなく、主題を一度昇華した後再び包み込む愛情のような温かみで声色に表すのです。少なくとも私にはそう感じられました。この、詞も音も理解した歌声でなければ、詞に音が補完されことば以上の世界を見せる“止揚”は図られないでしょう。
もう一つ言えば、その奏で方も繊細さを持つこと。ファルセットの音の先でさえも、単に裏声にひっくり返すだけではなくしっかりと制御され、曲想の文脈で音色を宿している微細な点にも注目です。
結論としてこの完成された歌声は、洗練による作った声や早熟とは全く違うと思うんですね。そんなレベルを超え、うたそのものが彼女に宿るような天賦の声なのです。その上これほど完成されているのに何処かまだまだ進化する可能性を感じさせます。
曲も何かの様式に彼女の才能を押し留めてしまうことなく、自由に彼女のパワーを発揮させる無国籍な楽曲が提供されています。1の泳ぐようなしなやかさ、7の荘厳さ、旋律美と声の輝きの相乗効果が素晴らしい高みで鳴った作品です。
お?これも、林明日香?!
おすすめ度 ★★★★★
名曲エンオニ・モリコーネのメロディーにいざなわれ、伊集院静さん作詞のサンクチュアリにつづき、5曲目の「新緑」は、明るくて軽やかな現代風なメロディー(どことなく、ミーシャとか今時のおしゃれな感じで、明日香さんの新しい魅力が楽しめます)といった感じで前半は、軽やかで柔らか、後半は「もう一度あなたに会いたい」でしっとりした後、どっしりと聴きごたえのある楽曲で閉められています。ボーナストラックのピアノ・アコースティックバージョンが思いのほか良かったです。おぉ~~林明日香!という曲と、ん?これも、林明日香?!って言うのと両方楽しめます。あと、歌詞カードがレトロな感じで、すっごくイイ!キャラメルの昔バージョンとかあるじゃないですか?そんな雰囲気ですよ(笑)
概要
年齢を超えて大きな共感を生んだ「もう一度あなたに会いたい」、映画「機関車先生」の主題歌になった「SANCTUARY~夢の島へ~」など、話題のシングル3曲を収録した2ndアルバム。“壮大で大陸的なバラードを歌うシンガー”というイメージが強い彼女だけど、本作では、気軽に口ずさめるソウルテイストのポップチューンやシンプルなバンド・サウンドを導入した楽曲もあり、ヴォーカリストとしての幅広い才能を印象づけている。もちろん感情を全面に押し出したパワフルな歌もいいけれど、リラックスしたかわいい雰囲気も、彼女の魅力。なんといっても、まだ15才ですからね、このアルバムのレコーディングをやってたときは。(森 朋之)