まだ神様が見える彼らは、まぶしいくらいだ。おすすめ度
★★★★★
プンプンの世界は、多分自分の街と、学校と、家と、そこにいる人たちなんだろう。
どんな人でも、世界全部を把握することなんてできなくて、自分の生きるテリトリーで
必死に考え、怠け、生きている。
しかしそんな狭い中でも、運命としか思えない強さで、惹かれてしまう人に出会うのだ。
少年プンプンは、拙さゆえに思いをうまく口に出来ない。
叔父雄一もまた、過去に縛られ、今生きている。
宇宙の事なんて考える暇も、プンプンにはなくなっていくのだろう。
女を知って、仕事を知って、色んな事がこんなもんかと知って。
本当に、宇宙なんてものがあるのか。
地平線の先なんてないんじゃないか。
今この眼に見えているものは、眼を閉じたときにそこにあるのか。
宇宙の事とか、女性器の事を考えることもある。
でも普段は多分、まだまだぼやっとした奴なんだろう。
帯に使われたイラストの、向こうに立っている少年
プンプンは案外、僕たちと似た顔をしているのかもしれない。
とるに足らない狂った日々おすすめ度
★★★★★
浅野いにお挑戦作ともとれる「おやすみプンプン」第3巻。前半はプンプンの中学生活、プンプンの男らしい発言によく言った!と思いつつ、よく考えれば矢口先輩に運命が託されてしまったのがなんだか情けない。そして後半は雄一おじさんの現在と過去のエピソード。到達点は見えないが、必ず訪れるであろう決着への期待は膨らむばかり。
この作品は浅野作品の中では最もギャグ色が強い。プンプンのキャラクター的外見と、それをそのままリアルワールドへと溶け込ませる手法によって、形から違和感を造っていたのは明らかだった。
しかし、中学生編に入って毛色が変わった。これまでの浅野いにおの地が出てきている。漫画としての見せ方は相変わらず抽象的な背景を用いたりしている部分が目立つが、登場人物それぞれの人間臭さが増している。プンプンや雄一おじさんや関や清水や愛子ちゃんの、カバー裏の迷路のように入り組んだ気が狂うような普通の悩みが、常に話の底に漂っている。
まずは、雄一おじさんに関して、これから核心部が描かれるだろう。
「ソラニン」が映画化されると聞いた気がする。確かに、これまでの作品はどれも映像映えする作品だと思う。
だからこそこの極端に漫画的な人間ドラマは、異彩を放っておもしろいのかもしれない。
色々書いたけど、まずは余計なことを考えずに読んでみてください。良くも悪くも、心に残ると思います。
考察
おすすめ度 ★★★★★
物語の軸は、プンプンと愛子ちゃん。
それは中学生編になっても全くブレていません。
しかし、中学生編に入ってから愛子ちゃんのセリフがまだひとつもないのです。
それなのにこの存在感・・・、ただごとじゃないですね。
無造作にテーブルの上に置かれたマフラーや、雄一おじさんがはずしたメガネ等は、装着していた時とは異なり、
リアルな質感を取り戻しています。
これはどうゆう事なのかとゆうと、つまり作中の登場人物達にはプンプンファミリーはちゃんとした"人間の造形"に見えている、
とゆう事です。
読者にだけあてがわれた"フィルター"とゆう訳ですね。
そして、それがどんな意味を成しているのかとゆうと、
重く陰惨になりがちな状況設定を中和させるだけでなく、つげ義春よろしく漫画的な新しい表現の誘発、及び確立にうまく貢献しているように見えます。
帯にもあるカラー絵の、プンプンのマフラーを巻いた愛子ちゃんの奥にたたずむ少年・・・彼が本来のプンプンの姿なのではないでしょうか?
皆さんはどう考えますか?
プンプンが男を見せれるかどうかは、次巻に持ち越し。
もうしばらく、雄一おじさんの熱い男っぷりを堪能しましょう。