最後の場面でホールデン、早川、そしてアレック・ギネス演じる英国人士官の動きによって、登場人物たち、とくにギネスの演じる人物の内面的混乱が映像的ダイナミズムをもって巧みに具現化される。そして彼らの内面的ドラマは圧倒的な映像表現とともに終局に向かってゆく。これこそデイヴィッド・リーンの真骨頂である。映画ならではの技法のひとつの高度な成功例がここにある。
勝ったのは誰だったか。おすすめ度
★★★★★
この作品は、テレビ放映も再三されているが、改めてビデオで見てみると、意外に重要な部分がカットされていたことに気付く。
この作品では、2つの戦いが描かれている。
祖国から降伏を命じられ脱走もできない英軍将校が選んだ戦いが1つ目の戦いである。これは、規律と技術力によって、日本軍ができない橋の完成を、英軍捕虜によって成し遂げ、英国人の優越を示すという戦いである。
映画では、この戦いの決着は、明らかについている。捕虜収容所長は、この映画の中で、明らかに負けを認めるに至っている。
しかし、この1つ目の戦いを進めるうち、英軍将校に明らかな変質がみられる。目的達成のために全力を集中すること。これを軍人は、当然と考える。しかし、本来軍人でない軍医は、これを「変質」として敏感に感じ取っていた。
この2つ目の戦いの決着は、橋を完成させた兵隊が去った後、この英軍将校の心理の中で決着をみることになる。
果たして、この英軍将校は、この映画の中で、2つ目の戦いに勝ったのだろうか。