美しい映画でした。ペンがサダウを思いながら泳ぐ川の緑。サダウにプレゼントした服の青。バンコクの日差しを反射する路地の壁の白。印象的な場面が鮮やかな色彩と結び付いていて、監督の美的センスを感じました。
また、都会と農村が、動と静で対照的に描かれていますが、こんなところにタイ人が抱く「都会観」「田舎観」が出ているのかなと思いました。バンコクでは、ペンが路地を疾走する長いシーンが印象的です。一方、月明かりの下で語り合う2人や、サダウの子の寝顔などに、農村の心地よい「静けさ」が表現されていて、癒されました。
異国の恋に充分酔わせていただいたおすすめ度
★★★★★
続けて三回観て、観終わった後も、しばらく余韻に浸っていた。ストーリーと出演者・演技の両面に惹かれた。主人公のペンは、妻や子どもと暮すことが何よりの願いでありながら、運命の悪戯か、努力が全て裏目に出て、連絡も取れない放浪状態になってしまう。彼の行動は無責任と責められても仕方がないだろう。私自身が妻サダウの立場になればやはり困惑や失望、あきらめといった感情が湧くだろう。しかし、「忘れないで」と泣きながら歌う切なさにほだされ、ペンをいとおしくも思えてくる。ラストシーンを含め、サダウの気持ちの動きに充分、共感できるのである。
もっとも夫婦の在り方は百人百様、タイの男性が全てペンのように頼りなく、女性に忍耐を強いる行動をとるということは、おそらくあるまい。それと同様、タイの男性の全てに、恋人時代のペンがサダウにささやくような甘い言葉を甘い抑揚で、ということは期待できないのかもしれない。文化をひとつの映画によって想像すると誤ったステレオタイプを持つことになるかもしれない。そうは思いつつも、異国の恋に充分酔わせていただいた。
ペンを演じるスパコン・ギッスワーンは、歌もうまいし、身体的にも鍛錬をしているようである。彼はまた、シーンに自分を解け込ませることができる芸達者でもある。髪型、服装によって別人のように見えるぐらい、シーンに合わせて自分を変えることができる。これは、サダウ役のシリヤゴーン・プッカウェートにも共通して言える。ラストシーンで見せる彼女の表情は娘時代のくったくない笑顔とは対照的で、切ない。
貴重なタイ映画おすすめ度
★★★★☆
ストーリーはチャップリンのサイレント映画や昔の日活映画にも通じる
ような、クラッシックで泥臭いものだが、主役の二人が大変魅力的なので
そう感じさせない。最後がハッピーエンドなのも良い。
映画の中盤まではタイの演歌的存在のルークトゥンが非常に上手く使われ
ており、又、それを披露する祭りや演芸会の様子が描かれていてとても
興味深いのだが、中盤からは音楽がトーンダウンしてしまうのが残念。
悲しい時、辛い時こそ庶民が口ずさむルークトゥンを出して欲しかった。
映像特典が豊富で、プロモーション用の番組で出演俳優や監督の素顔に
触れる事が出来る。日本でタイ映画はなかなか見られないので、この映画
が先鞭になって欲しいと思う。
見逃さないで!おすすめ度
★★★★★
大変素晴らしい映画。
現在バンコクに住んでいるので、風景や空気感に親しみがあるのを割り引いても、脱帽と正直に告白。この監督の物語る「力」、言葉がわからなくても胸をうつ音楽、俳優の力強さに、徹頭徹尾揺さぶられてしまった。
物語やテーマはいたってシンプルだが、その描き方が尋常ではない! ユニークという誉め言葉を使わざるをえない。そしてそのユニークさが完全な説得力を持っているという稀有な映画。生活や文化になじみがないからといって、その映画を心から楽しめないということではないことの証明といっても言い過ぎではない。お見逃しなく!