無神論者が作る足がかりおすすめ度
★★★★☆
この本のおもしろいところは、コーランに対する本音(あまり多くの人が表立っていえないようなもの)をずばり言っていることだろう。
あくまで、無神論者からの視点である。
たぶんこの本は、日本人はすんなり受け入れられても、諸外国、キリスト教やイスラムの人びとは、とうてい受け入れられない類だと思う。
これを読んだだけで、「イスラム教を知っている」と思うことにはならない。
なぜなら、多くのイスラム信仰者は、コーランを勉強することはあっても、通読、暗誦できるものはそう多くはないからだ。
(私たちだって、仏教の言葉は聞いてもほとんど分からないように)
彼らは、彼らなりの信仰に生きていて、それは必ずしもコーラン通りではない。
だからスンニ派やシーア派、原理主義、スーフィズムなど、いくつもの分派に分かれる。
この本では、コーランのことを概観できても、その先のイスラム全体は分からない。
入門書と言ってよいのかどうかは不明だが、岩波3巻分を読むのが辛い人には、これを足がかりにするのはアリではなかろうか。
ただ、これを読んで「知ったつもり」になるのは、いろいろと止めておいたほうがいいと思う。
信じる人はいつだって真剣なのであって、こうしたちゃかし方は、おそらく彼らの好むところではないだろうから。
イスラムの入門書に最適。おすすめ度
★★★★★
本書はイスラム教の聖典である『コーラン』を一般読者にもわかりやすく解説することを目的としたもの。『コーラン』だけでなく、イスラム教の開祖であるマホメットや、イスラム教の教義についても上手に纏められている。
著者はイスラム教の専門家ではないし、本書自体も学術書ではなくエッセイであって非常に読みやすいのだが、あまりにも読み易いので読んでいる途中、「こんなに軽くて、間違ったこと書いてないのかなあ・・・?」と怪しんでしまった程だが、その点解説を担当しているイスラム教専門の学者によると、大丈夫!だそうだ。むしろ著者は本当によく勉強していて、本書はイスラムの専門家から見ても、非常によくできた入門書になっているらしい。
日本人のイスラム教のイメージには、「何をしでかすかわからない」とか「女性を差別している」とかいうものが多いだろうけれども、「ある程度イスラム教を勉強してからきちんと判断しようじゃないか」というのが著者のスタンスなんだろうと思う。
イスラムの教義に賛成するにせよ、反対にするにせよ、まずは知らなくちゃあ話にもならない。
本書はそのイスラム教を知るということの取っ掛かりに最適な本である。
とてもわかりやすい。おすすめ度
★★★★★
とてもわかりやすいコーランの解説書。なんか毎日のようにテロがおきて悲惨なことになってしまっている
イスラム教の国々。好戦的な宗教なのでしょうか?という先入観がありますが、
本書をよめばわかるように、キリスト教、ユダヤ教の親戚みたいなもので、
異教徒死すべし、なんてかいてません。むしろ、無宗教な日本のほうがイスラムの国からすれば、戦争を
しているキリスト教国よりはるか遠くに存在する国だそうです。
知らないのはお互い様で、日本人(個人的に私は禅宗)からしてみれば、イスラム教って
接点ないですねえ。いいともわるいとも、なんとも意見のだしようがないですね。
・・・という、普通の日本人の視線から述べてあるので、イスラム教の方からすれば”冷たい”書き方
がところどころありますが、それが正直なところの感想であるという気がします。
あらためて、毎日海外ニュースにとりあげられるイスラム教を理解するにはいい本ですよ。
良書.一読の価値あり
おすすめ度 ★★★★☆
それを専門とはしていない普通の人の感覚で,その専門家からみても大きく勘違いをしていない書を書けるということを許された稀有な人材が阿刀田氏であるように思う.この意味で,とくに阿刀田氏がイスラム圏を旅した記,第10話「聖典の故里を訪ねて」は興味深かった.
なんとなく,全体的にキレに欠ける印象をもったが,「聖典」をエッセイに転換していくことの難しさ故なのだろう.それだけ,オリジナルを踏まえているということの証左とも言えるかもしれない.
それにしてもイスラム教がこんなにキリスト教(やユダヤ教)に近いとは思わなかった.厳密には違うだろうし,それぞれの信者からすれば「全然違う」と言うのだろうが,もっとずっと思想や文化的に遠い東洋の一島国にいる人間から見れば,似ているところも結構あるんじゃない,と思わずにいられない.これは私個人に限らず,普通に学校教育を受けてきた日本人の感覚ともそう違わないのではあるまいか.
イスラム教について,ニュートラルに考えていく,その第一歩として,本書と出会えてよかったと思う.